ヤモリは、おとなしい生き物だと思っていた。
夜な夜な網戸や窓に現れて、虫を捕るだけだと。
そうじゃないヤモリがいると知ったのは、西表島に泊まった最初の夜。
コウモリの捕獲調査のために集められたメンバーの宿泊施設。
(といっても、無人の民家を改造した土間だけの平屋)
出身も学校もそれぞれ違う学生と、コウモリを研究している大学の先生。
みんなで泡盛を飲んでいたら、けたたましい音が聞こえてきた。
「キョキョキョキョ キョキョキョキョ」
まるで、笑い声のような音。
音源は天井と壁の境目あたり。
よく見ると、ヤモリが壁の上の方に張り付いている。
音源からして、こいつが音の主らしい。
みんなに注目されたせいか、いったん鳴き止んだヤモリ。
しばらくしたら、また鳴き始めた。
これが結構やかましい。
鳴き始めたときもそうだったけど、会話の邪魔になるくらいの音量。
「うるさいぞ~」
誰ともなく、ヤモリに言ってみる。
一瞬鳴き止んで、また鳴き始めるヤモリ。
「うるさいぞ~」
「…」
「キョキョキョキョ キョキョキョキョ」
「うるさいぞ~」
「…」
「キョキョキョキョ キョキョキョキョ」
そんなやりとりを繰り返して、鳴かなくなったのは22時頃だったか。
みんなが眠る前に鳴き止んでくれて、ほんとうに良かった。
帰宅してから図鑑で調べてみた。
どうも「ホオグロヤモリ」という種類だったらしい。
本州に多い「ニホンヤモリ」と違って、良く鳴くのだとか。
何のために鳴いてるのか、よくわからなかったけど。
帰る日まで、毎夜聞き親しんだ鳴き声。
今でも時々懐かしくなる。
ニホンヤモリも、もしかしたら鳴くかもしれない。
そう思って、つついてみるけど、いまだ鳴き声は聞けずじまい。
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